PR

読書効果のエビデンスまとめ|研究・論文で分かっていることと限界

読書効果のエビデンスまとめ|研究・論文で分かっていることと限界 読書の効果・メリット
記事内に広告が含まれています。

「読書にはストレス解消や認知症予防の効果がある」とよく聞くけれど、そのエビデンスはどこまで確かなのか、元になっている研究や論文はどんなものなのか、気になっていませんか?

この記事では、読書効果のエビデンスとして知られている研究・論文とデータを、分野ごとに出典つきでまとめ、どこまで言えてどこからが言いすぎなのかを解説します。

読み終えるころには、ネットで見かける読書の効果の話を自分で見分けられるようになり、根拠のある情報をもとに読書と付き合えるようになります。

読書効果のエビデンスは「関係あり」が多く「因果の証明」は少ない

読書効果のエビデンスは「関係あり」が多く「因果の証明」は少ない

読書効果のエビデンスは、語彙や読解力、学力、健康との「関係」を示す研究は多い一方で、「読書が原因で良くなった」と証明した研究はまだ少ないのが現状です。

たとえば「本をよく読む人ほど語彙が多い」という結果は、多くの研究でくり返し確かめられています。

ただ、それだけでは、読書で語彙が増えたのか、もともと言葉が得意な人が本をよく読むのか、区別がつきません。

研究を読むときは、次のように「どんな方法で調べたか」を見ると、エビデンスの強さの目安になります。

研究の方法 分かること 強さの目安
一度だけの調査 その時点での関係 弱め
長期の追跡調査 先に読んでいた人がその後どうなったか 中くらい
実験(読む群と読まない群) 読書による変化 強め(人数や再現性しだい)
複数研究のまとめ(メタ分析) 多くの研究に共通する傾向 強め
研究の方法とエビデンスの強さ
研究の方法とエビデンスの強さ

言葉と学力に関する読書効果の研究・データ

言葉と学力に関する読書効果の研究・データ

99の研究のまとめ:よく読む人ほど語彙と読解力が高い

モルとブスが2011年に心理学の専門誌「Psychological Bulletin」に発表したメタ分析では、幼児から大学生までを対象にした99の研究(計7,669人)をまとめました。

余暇に本を読む量と、読解力やつづりの力との間には、どの年齢でも中程度から強い関係が見られました。

話し言葉の力との関係は、幼稚園児で12%、高校生で30%、大学生で34%と、年齢が上がるほど読む量で説明できる部分が大きくなっています。

研究者は、力のある子ほどよく読み、よく読むほどさらに力が伸びるという「上向きのらせん」の関係だと考察しています。

イギリスの追跡調査:楽しみで読む子は10〜16歳の伸びが大きい

ロンドン大学教育研究所(IOE)のサリバンとブラウンは、1970年生まれのイギリス人約6,000人を追いかける調査のデータを分析しました。

その結果、子どものころに楽しみで本を読んでいた人は、10歳から16歳までの間に、語彙やつづり、算数の成績の伸びが大きかったと報告しています。

家庭の経済状況などの違いを考慮しても差が残ったとされ、読書と学びの関係を時間の流れに沿って示した研究として知られています。

全国学力・学習状況調査:読書が好きな子ほど正答率が高い

文部科学省と国立教育政策研究所の令和7年度全国学力・学習状況調査では、小学6年生の国語の平均正答率が、読書が「好き」と答えた子で73.6%、「好きではない」と答えた子で56.2%でした。

同じ調査で読書を全くしない子の割合がどう変わったかは、読書離れのデータ最新版で紹介しています。

平日の読書時間別に見ても、1日に1時間以上読む子の正答率は72%台で、まったく読まない子の62.2%より高くなっています。

一方で、1時間以上読む子と2時間以上読む子の差はほとんどなく、読む時間が長いほど正答率が上がり続けるわけではない点も読み取れます。

言葉と学力に関する主な研究とデータ
言葉と学力に関する主な研究とデータ

心と脳に関する読書効果の研究

心と脳に関する読書効果の研究

30分の読書でストレスの指標が下がった実験

2009年にアメリカの大学の専門誌に発表された研究では、大学院生22人に30分のヨガ、ユーモア(笑い)、読書をそれぞれ行ってもらいました。

その結果、どの方法でも血圧や心拍数、ストレスの自己評価が下がり、3つの方法の間で効果に差はなかったと報告されています。

人数が少ないので、読書のリラックス効果を示す研究の一つとして受け止めるのがよいでしょう。

小説を読んだあと、脳のつながりに変化が見られた

アメリカのエモリー大学の研究チームが2013年に発表した研究では、大学生21人に19日間にわたって同じ小説を少しずつ読んでもらい、毎朝脳をMRIで調べました。

読んだ翌日には、言葉に関わる脳の領域などのつながりが強まり、その変化は読み終えたあとも数日続いたと報告されています。

ただし人数は少なく、この変化が長く続くのか、どんな力につながるのかはまだ分かっていません。

「小説で共感力が上がる」は再現されなかった

2013年に、文学作品を少し読むと他人の気持ちを読み取るテストの成績が上がったという研究が科学誌に発表されました。

その後、2016年に3つの研究グループが大人数で同じ方法を試したところ、文学作品を読んだグループだけが成績が上がるという結果は出なかったと報告されています。

あわせて読みたい:読書の効果がないと感じる5つの理由と対策|「メリットしかない」は本当?

健康に関する読書効果の研究

健康に関する読書効果の研究

本を読む人は死亡リスクが約20%低かった

イェール大学の研究チームが2016年に発表した研究では、50歳以上の約3,600人を最長12年間追跡し、本を読む人は読まない人より死亡リスクが約20%低かったと報告しています。

頭を使う活動と記憶力・認知症

ラッシュ大学の2013年の研究では、読書や書き物など頭を使う活動を晩年も多く続けた高齢者は、記憶力の低下が約32%ゆるやかでした。

2003年に医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究でも、75歳以上の469人のうち、読書やボードゲーム、楽器演奏などをよくしていた人は認知症になるリスクが低かったとされています。

いずれも追跡調査で関係を見たもので、読書が病気を防ぐと証明したものではありません。

根拠が弱い読書効果の話とデータの見分け方

根拠が弱い読書効果の話とデータの見分け方

「6分の読書でストレスが68%減る」

イギリスのサセックス大学の研究として広く紹介されている数字ですが、2009年に民間の研究会社が行った調査とされ、学術誌の審査を受けた論文としては確認できません。

調査の方法や人数も詳しく公開されていないので、この数字を読書の効果の根拠として使うのはおすすめしません。

エビデンスを見分ける4つのチェック

  • 大学名や研究者名、発表年、掲載誌が書かれているか
  • 調べた人数は何人か
  • 「関係がある」のか「原因である」のか
  • 別の研究でも同じ結果が出ているか

日本語で読める読書効果の本

読書効果の研究を日本語でまとめて知りたい方には、北里大学の猪原敬介さんによる『読書効果の科学 読書の“穏やかな”力を活かす3原則』(京都大学学術出版会)があります。

出版社の紹介によると、言葉・人格・精神的健康・身体的健康・学力・仕事(収入)の6つの分野について、読書の効果を研究にもとづいて評価し、効果は確かにあるが万能ではないという立場から、読書の力を活かす3つの原則を提案している本です。

エビデンスを見分ける4つのチェック
エビデンスを見分ける4つのチェック

よくある質問

よくある質問

読書効果にエビデンスはある?

語彙や読解力、学力との関係は、多くの研究やデータでくり返し確かめられています。

一方、ストレスや共感力、健康については研究が少なかったり結果が分かれていたりするため、「関係がある」程度に受け止めるのが無難です。

読書効果の論文はどこで探せる?

英語の論文はGoogle ScholarやPubMed、日本語の論文はCiNii Researchなどで、研究者名やタイトルで検索できます。

元の論文の要約(アブストラクト)を読むと、人数や方法が確認できます。

読書のメリットを示すデータで信頼できるものは?

文化庁「国語に関する世論調査」や全国学校図書館協議会「学校読書調査」、文部科学省「全国学力・学習状況調査」など、公的な調査は方法や人数が公開されていて信頼しやすいデータです。

ただし、読書の量と成績の関係は相関なので、原因と結果を取り違えないよう注意しましょう。

読書で頭がよくなるというエビデンスは?

よく読む人ほど語彙や読解力が高いことは確かめられていますが、「頭がよくなる」の意味が広いため、何をもって頭のよさとするかで答えが変わります。

言葉や読解の力との関係は強い、と覚えておくと正確です。

読書効果の研究でよく使われる「相関」と「因果」の違いは?

相関は「一方が多いと、もう一方も多い」という関係で、因果は「一方が原因でもう一方が起こる」という関係です。

読書の研究の多くは相関を示したもので、因果を示すには実験や長期の追跡調査が必要になります。

『読書効果の科学』はどんな本?

北里大学の猪原敬介さんが、読書が言葉・人格・心と体の健康・学力・収入に与える効果を、研究にもとづいて評価した本です。

京都大学学術出版会から刊行されています。

まとめ:読書効果のエビデンスは「穏やかだが確かにある」

まとめ:読書効果のエビデンスは「穏やかだが確かにある」

読書効果のエビデンスを振り返ります。

分野 主な研究・データ 分かっていること
語彙・読解力 モルとブス(2011) よく読む人ほど高い(99研究のまとめ)
学力 全国学力・学習状況調査(令和7年度) 読書が好きな子ほど正答率が高い
ストレス ヨガ・笑い・読書の比較(2009) 30分で指標が下がった(22人)
健康 イェール大学(2016) 本を読む人は死亡リスクが約20%低い
共感力 2013年の研究と2016年の追試 再現されなかった

読書の効果は、魔法のように劇的なものではありませんが、確かに存在することが多くの研究から分かっています。

根拠のある情報をもとに、自分に合った読み方で読書を続けてみてください。

大人の読書については読書の効果は大人になってからでもある?社会人が本を読む意味、効果の全体像は読書の効果とメリットまとめ|本を読むと何が変わるかを研究とデータで解説で紹介しています。

次に読む:読書好きな人の特徴|本を読む人に多い性格・あるあると共通点
読書の効果|研究で分かっている読書の良さと根拠が弱い話

タイトルとURLをコピーしました