本を読むと語彙力がつくとよく聞くけれど、本当に読書で語彙力や読解力は上がるのか、たくさん読んでいるのに言葉が増えた気がしないのはなぜなのか、気になっていませんか?
この記事では、読書と語彙力・読解力の関係について、研究や公的なデータで分かっていることと、語彙力が上がらないと感じるときの原因、言葉を増やしやすい読み方を解説します。
読み終えるころには、読書で語彙力が伸びる仕組みが分かり、今日から本の読み方を少し変えて、覚えた言葉を自分で使えるようになります。
読書で語彙力は上がる?研究では「読む量」と語彙はつながっている

読書で語彙力が上がることは多くの研究で支持されていますが、分かっているのは「よく読む人ほど語彙が多い」という関係で、本を読めば誰でも同じように伸びると決まったわけではありません。
本には、ふだんの会話やテレビではあまり出てこない言葉がたくさん出てきます。
知らない言葉に出会ったとき、前後の文章から意味を推測したり、辞書で調べたりすることで、言葉が少しずつ自分のものになっていきます。
アメリカの読書研究者カニンガムとスタノヴィッチは、1998年に教育誌「American Educator」に発表した論文「What Reading Does for the Mind」で、ふだんから活字に触れる量が多い人ほど、語彙や読解、知識が豊かだという研究をまとめています。
一方で、読書量と語彙力の関係には「もともと言葉を知っている人ほど本を楽しめるので、たくさん読む」という逆向きの流れも含まれています。
この記事では、読書と語彙の関係を、分かっていることと言いすぎになることに分けて見ていきます。

読書と語彙力の関係|研究とデータで分かっていること

読書と語彙の関係は、海外でも日本でも調べられています。
ここでは、出典のはっきりしている研究とデータを紹介します。
読む量が多い人ほど語彙が多い(海外の研究)
カニンガムとスタノヴィッチの論文では、読書量の多い子どもは、もともとの学力や家庭環境の影響を差し引いても、語彙や知識が多い傾向があったと紹介されています。
また、文章に書かれている言葉は会話の言葉よりも種類が多く、珍しい言葉に出会う機会は、話し言葉やテレビより本のほうが多いと指摘されています。
語彙の多くは、先生から一語ずつ教わるのではなく、本などの文章を読む中で自然に身につくという考え方です。
メタ分析では「読む力と読む量は影響し合う」
オランダのモルとバスが2011年に心理学の専門誌「Psychological Bulletin」に発表したメタ分析では、幼児から大学生までを対象にした99件の研究(のべ7,669人)をまとめて分析しています。
その結果、余暇の読書量は、読解力やつづりの力と中程度から強い相関があったと報告されています。
著者たちは、読む力がある子ほどよく読み、よく読むことで読む力がさらに伸びるという「上向きのらせん」のような関係だと説明しています。
日本のデータ:読書が好きな子ほど正答数が高い
文部科学省の委託で静岡大学がまとめた「読書活動と学力・学習状況の関係に関する調査研究」(平成21年度の全国学力・学習状況調査のデータを分析)では、読書が好きな児童生徒ほど、国語だけでなく算数・数学でも正答数が高い傾向がはっきり見られました。
一方で、平日の読書時間がとても長い子や図書館の利用がとても多い子が、必ずしも正答数が高いわけではなかったとも報告されています。
報告書では、長さより読書の中身が大切で、限られた時間の中で質の高い読書をしている子の成績が高いことがうかがえる、とまとめています。

読書と読解力の因果関係はどこまで言える?

「読書をすれば読解力が上がる」と言い切れるかというと、慎重に考える必要があります。
相関と因果は別のもの
ここまでの研究の多くは、読書量と語彙・読解力を同じ時期に測って比べたものです。
この方法では、「よく読むから読解力が高い」のか、「読解力が高いからよく読める」のかを、はっきり分けることはできません。
読書と読解力の関係は、どちらか一方が原因というより、読む力と読む量がお互いを押し上げていく関係だと考えるのが今の研究に近い理解です。
それでも読書が語彙の土台になる理由
因果関係がはっきりしないからといって、読書が役に立たないという意味ではありません。
言葉は、実際に使われている文の中で何度も出会うことで、意味や使い方が身についていきます。
その「言葉に出会う回数」を手軽に増やせる方法として、読書はとても効率のよい手段です。
読解力向上を目指すなら、読書で言葉と文章の型にたくさん触れつつ、読んだ内容を要約する、説明するといった練習を組み合わせるのがおすすめです。
あわせて読みたい:読書の効果|研究で分かっている読書の良さと根拠が弱い話
読書しても語彙力が上がらないと感じる3つの原因

たくさん本を読んでいるのに、語彙力が上がった気がしないという人も少なくありません。
よくある原因は次の3つです。
原因1:知らない言葉を読み飛ばしている
物語の流れを追うことに夢中になると、知らない言葉をなんとなく読み流してしまいます。
意味を推測できる言葉ならそれでも少しずつ身につきますが、何度出てきても意味があいまいなままの言葉は、いつまでも使える言葉になりません。
原因2:同じジャンルばかり読んでいる
好きなジャンルだけを読んでいると、出てくる言葉の種類が偏りがちです。
小説とあわせて、新聞のコラムや新書、エッセイなど、少し違う分野の文章を読むと、出会う言葉の幅が広がります。
原因3:読んだ言葉を使う機会がない
語彙には、読めば分かる「知っている言葉」と、自分で書いたり話したりできる「使える言葉」があります。
読書で増えるのはまず「知っている言葉」で、使える言葉にするには、自分で書いたり話したりして使ってみることが欠かせません。
語彙力が上がらないと感じる人の多くは、読む量ではなく、使う機会が足りていないことが多いものです。
読書で語彙力を伸ばす読み方のコツ

同じ時間を使うなら、言葉が残りやすい読み方をしたほうがお得です。
気になった言葉に印をつけて、あとでまとめて調べる
読むたびに辞書を引くと、話の流れが途切れて読書が楽しくなくなります。
気になった言葉に付箋や印をつけておき、章の終わりにまとめて調べると、流れを切らずに言葉を確かめられます。
ジャンルを少しずつ広げる
小説が好きな人は、同じ作家のエッセイや、作品の舞台に関係するノンフィクションに手を伸ばしてみてください。
興味のつながった本なら、少し難しい言葉が出てきても読み進めやすくなります。
読んだら短く書いて、覚えた言葉を使ってみる
読み終えたら、内容を3行ほどで要約したり、心に残った一文とその理由を書いたりしてみましょう。
そのときに本で出会った言葉をひとつ使うと、「知っている言葉」が「使える言葉」に変わっていきます。
子どもの場合は、読んだ本について家族で話すだけでも、言葉を使う練習になります。
語彙が増えることは、学力全体とも関わっています。
読書と成績の関係は読書と勉強・学力の関係|データで見る効果と読書は勉強に入るかでくわしく紹介しています。

よくある質問

読書で語彙力はどのくらいで上がる?
何冊読めば語彙力が上がる、という決まった基準はありません。
研究で分かっているのは、長い期間にわたって読む量が多い人ほど語彙が多いという傾向なので、毎日少しずつ読み続けることが大切です。
漫画でも語彙力はつく?
漫画にも、ふだん使わない言葉や言い回しはたくさん出てきます。
ただ、絵で説明される部分が多い分、文章だけの本のほうが言葉から場面を思い浮かべる練習になるので、両方を読むのがおすすめです。
大人になってからでも読書で語彙は増える?
語彙は大人になってからも増やせます。
仕事で使う分野の本や新聞など、これまで読まなかった種類の文章を読むと、新しい言葉に出会いやすくなります。
読解力を上げるにはどんな本がいい?
最初は、自分が興味を持てて、少しだけ難しいと感じるくらいの本がおすすめです。
読み終えたら要約してみると、内容をどこまで理解できたかを確かめられます。
子どもの語彙力を伸ばすには何をすればいい?
本を身近に置き、読んだ本について家族で話す時間をつくるのが手軽な方法です。
分からない言葉を聞かれたら、すぐに答えを教えるより、前後の文から一緒に意味を考えてみると、言葉の推測力も育ちます。
速読すると語彙力は伸びにくい?
速く読むこと自体が悪いわけではありませんが、知らない言葉を飛ばしてしまうと、その言葉は身につきにくくなります。
語彙を増やしたいときは、気になった言葉のところで少し立ち止まる読み方を意識してみてください。
まとめ:読書は語彙力と読解力の土台になる

読書と語彙力・読解力の関係を振り返ります。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 読書で語彙力は上がる? | よく読む人ほど語彙が多いという研究が多い |
| 読書と読解力の因果関係は? | 読む力と読む量が影響し合う関係(どちらか一方が原因とは言えない) |
| 日本のデータは? | 読書が好きな子ほど正答数が高い。読書時間が長いほど高いわけではない |
| 語彙力が上がらない原因は? | 読み飛ばし・ジャンルの偏り・使う機会がない |
| 伸ばすコツは? | 印をつけて調べる・ジャンルを広げる・短く書いて使う |
読書は、言葉に出会う回数を増やせるいちばん手軽な方法です。
読み方を少し工夫して、出会った言葉を自分でも使ってみてください。
読書と頭の良さの関係については読書で頭は良くなる?語彙力・読解力・想像力との関係をデータで解説もあわせてどうぞ。
次に読む:読書は意味ない?時間の無駄と言われる理由と反論|読書は必要か
読書の効果とメリットまとめ|本を読むと何が変わるかを研究とデータで解説

