高校生の読書感想文、書き方の説明は読んだけれど、実際に高校生らしい文章がどんなものなのか、例を一本通して見てみたいと思っていませんか?
この記事では、読書感想文の高校生向けの例として、中島敦『山月記』を題材にしたオリジナルの例文を一本まるごと紹介し、段落ごとに何をしているのかを解説します。
読み終えるころには、高校生の感想文で求められる「考察」と「自分の意見」がどういう文章なのかが具体的に分かり、自分の本で同じ組み立てを再現できるようになります。
読書感想文の高校生の例|感想より「考察と意見」が中心になる

高校生の読書感想文は、心に残った場面について「なぜそうなったのか」を考察し、自分の意見として言い切る文章が中心になります。
小学生や中学生の感想文では、心が動いた場面と自分の体験をつなげられれば十分でした。
高校生になると、それに加えて、登場人物の言動の理由を本文から読み取り、自分はどう考えるのかをはっきり書くことが求められます。
字数も、青少年読書感想文全国コンクールの高等学校の部では本文2,000字以内(第72回・2026年度)と、原稿用紙5枚分あります。
この長さを、場面の説明ではなく自分の考えで埋められるかどうかが、高校生の感想文の分かれ目です。

高校生の読書感想文の書き方が分かる5枚の例文(『山月記』)

中島敦の『山月記』を読んだという設定の例文です。
この記事のために作ったオリジナルの文章で、入賞作品やほかのサイトの例文ではありません。
文章を写すのではなく、段落の役割と考えの深め方を見る見本として使ってください。
題名「私の中の虎を飼いならす」
虎になったのは、李徴だけなのだろうか。
『山月記』を読み終えたとき、私は物語の結末よりも、この問いのほうが頭から離れなかった。
若くして役人になった李徴は、詩人として名を残そうと職を辞するが、思うように認められず、やがて姿を消す。
一年後、旧友の袁傪が山中で出会ったのは、虎になった李徴だった。
李徴は草むらの中から、自分がなぜ虎になったのかを語り始める。
私が最も考えさせられたのは、李徴が自分を分析する「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」という言葉である。
李徴は、自分に才能がないと分かるのを恐れて、あえて努力して磨こうとしなかったと語る。
一方で、自分には才能があるはずだとも信じていたので、ほかの詩人たちと交わって学ぶこともしなかった。
はじめは、なんて面倒な人だろうと思った。
しかし読み返すうちに、この二つの言葉は、私自身のことを言い当てているように思えてきた。
私は中学生のころから吹奏楽部でトランペットを吹いている。
高校一年の秋、定期演奏会のソロを決めるオーディションがあった。
私は練習では自信があったのに、結局、手を挙げなかった。
「今年は先輩に譲るべきだ」と周りには言ったが、本当は、落ちて自分の実力を知るのがこわかったのだ。
そのくせ、ソロを吹いた同級生の演奏を聞きながら、自分ならもっとうまく吹けたと心のどこかで思っていた。
あのときの私は、まさに臆病な自尊心と尊大な羞恥心を抱えていた。
その後、私はしばらく練習に身が入らなかった。
うまく吹けても「どうせ本番では吹かないのだから」と思い、失敗しても「本気を出していないだけだ」と言い訳ができた。
挑戦しないでいれば、自分の実力が試されることは一度もない。
その居心地のよさが、実は自分を少しずつ弱くしていたのだと、李徴の告白を読んで初めて気づいた。
李徴は、人間は誰でも猛獣使いであり、その猛獣にあたるのが各人の性情だと語る。
つまり、虎は特別な人にだけ現れるのではなく、だれの中にもいるということだ。
李徴が虎になったのは、才能がなかったからではない。
自分の弱さと向き合うことを避け続け、その猛獣を飼いならす努力をしなかったからだと私は考える。
もう一つ心に残ったのは、李徴が袁傪に頼みごとをする場面だ。
李徴は、残された妻子のことよりも先に、自分の詩を書き留めてほしいと頼む。
そして後から、妻子のことより自分の詩のほうを気にかけるような男だから、こんな獣に身を落とすのだと自分を責める。
私はここに、李徴の本当の悲しさがあると思う。
彼は最後まで、自分がどう評価されるかにとらわれていた。
けれど、それに気づいて口に出せたことは、人間の心がまだ残っている証でもある。
そして、その告白を最後まで聞いたのが袁傪だった。
袁傪は、虎になった旧友を恐れて逃げることもできたのに、草むらの前にとどまり、李徴の詩を部下に書き取らせ、残された家族のことも引き受ける。
李徴が自分の弱さを言葉にできたのは、それを受け止める相手がいたからではないだろうか。
私にとっての袁傪は、オーディションのあと「次は手を挙げてみたら」と声をかけてくれた部活の先輩かもしれない。
弱さを打ち明けられる相手がいることも、心の中の虎を飼いならすための大切な力なのだと思う。
現代の私たちは、SNSで他人の評価が数字として見える世界に生きている。
いいねの数を気にして、失敗しそうなことには手を出さない。
それは、李徴が詩人たちの輪に入らなかったのと、どこか似ている。
評価を恐れて挑戦しないことは、傷つかずにすむ安全な道に見えるが、その道の先で自分の可能性を小さくしてしまうのかもしれない。
『山月記』を読む前の私は、挑戦しないのは謙虚さだと思っていた。
今は、それが自分の中の虎を育てる行為でもあったと分かる。
次のオーディションでは、結果がどうであれ手を挙げようと思う。
落ちたとしても、それは自分の実力を知り、磨き始めるための第一歩になるはずだ。
私の中の虎を飼いならすのは、ほかのだれでもなく、私自身なのだから。
この例文は、題名・学校名・氏名を除いた本文で約1,650字、改行による空きマスを含めると原稿用紙の5枚目に入る長さです。
2,000字の指定なら、本論の場面をもう1つ増やすか、体験の段落をふくらませて調整します。
例文の構成を段落ごとに解説

例文の段落が、それぞれどんな役割を持っているかを見ていきます。
序論:問いを立てて、あらすじは1段落に
1段落目では「虎になったのは、李徴だけなのだろうか」という問いを立て、感想文全体のテーマを最初に示しています。
2段落目のあらすじは、場面の理解に必要なことだけを3文にまとめています。
本論:本文の言葉→自分の体験→考察
3段落目で本文の言葉を取り上げ、4・5段落目で吹奏楽部の体験と重ね、6段落目で「李徴が虎になったのはなぜか」を自分の意見として言い切っています。
7・8段落目では別の場面を取り上げ、李徴への見方と、話を聞く袁傪の役割まで考えを深めています。
結論:社会へ広げてから自分に戻る
9段落目でSNSという現代の社会とつなぎ、10段落目で「読む前の私」と「今の私」を比べて、具体的な行動で締めています。
社会に話を広げたあと、最後はもう一度自分の行動に戻ると、感想文が評論文になりすぎずにまとまります。

高校生の読書感想文で評価される書き方のポイント

例文で使っている書き方を、ほかの本でも使えるポイントとして整理します。
本文の言葉を根拠にして考える
高校生の感想文では、「なんとなくそう感じた」ではなく、本文のどの言葉からそう考えたのかを示すと説得力が出ます。
引用するときは、青少年読書感想文全国コンクールの公式Q&Aにあるとおり、本文と一字一句同じに書き、かぎかっこでくくります。
体験は小さく具体的に
例文の体験は、オーディションで手を挙げなかったという一つの出来事です。
大きな出来事でなくても、そのときの本当の気持ちまで書くことで、本の言葉と自分がしっかり結びつきます。
文体は「である」でそろえる
高校生の感想文は「だ・である」体で書くと、意見がはっきりした印象になります。
「です・ます」でもまちがいではありませんが、どちらかにそろえ、途中で混ぜないようにしましょう。
高校生の書き方全体は読書感想文の書き方【高校生】|評価される構成と書き出し・名前の書き方で、本選びは読書感想文のおすすめの本【高校生】|近代文学・現代小説・戦争の名作で解説しています。

例文を自分の感想文に生かす方法

この例文は、そのまま写すと、体験も考えもあなたのものではない文章になってしまいます。
生かし方は、次の3つです。
- 例文の10の段落の役割(問い・あらすじ・本文の言葉・体験・体験の続き・考察・別の場面・聞き手の存在・社会・変化)をメモする
- 自分が読んだ本で、それぞれの役割にあたる内容をメモで埋める
- 例文を閉じ、メモだけを見て自分の言葉で書く
体験の段落は、必ず自分に本当にあった出来事で書いてください。
例文や他人の文章を写すことの問題は読書感想文で中学生のコピペはバレる?丸写しせずに早く書く方法でも説明しています。
よくある質問

高校生の読書感想文の例文は写してもいい?
写して提出するのはやめましょう。
コンクールでは個人のオリジナルが条件で、学校の課題としても自分の感想文とは言えなくなります。
高校生の読書感想文は何字書けばいい?
学校の指定が優先ですが、コンクールの高等学校の部は本文2,000字以内です。
原稿用紙5枚の後半まで書けると、しっかり書いた印象になります。
高校生の読書感想文にはどんな本が向いている?
登場人物の選択に賛成・反対の意見を持てる本や、自分の悩みと重ねられる本が書きやすい本です。
短編の名作でも、考察の材料が多い作品なら十分に2,000字を書けます。
感想文と小論文の違いは?
小論文は与えられた問いに論理的に答える文章で、感想文は本を読んだ自分の心の動きと考えを書く文章です。
高校生の感想文は考察を含みますが、最後は自分がどう変わったかに戻るのが感想文らしさです。
入賞作品の例はどこで読める?
青少年読書感想文全国コンクールの公式サイトで、過去の上位入賞作品を読むことができます。
入賞作品は毎日新聞での発表のほか、入賞作品集『考える読書』にもまとめられます。
例文のようにSNSの話を入れないといけない?
社会の話題を入れるのは考えを広げる方法の一つで、必須ではありません。
本のテーマに合う話題があるときだけ、1段落程度で入れるのがちょうどよい量です。
まとめ:例文の「段落の役割」をまねする

高校生の読書感想文の例をふり返ります。
| 段落 | 例文でしていること |
|---|---|
| 序論 | 問いを立て、あらすじは必要な分だけ |
| 本論① | 本文の言葉を取り上げ、自分の体験と重ねる |
| 本論② | 「なぜそうなったか」を自分の意見として言い切る |
| 本論③ | 別の場面で見方をもう一段深める |
| 結論 | 社会へ広げてから、自分の行動に戻る |
例文の文章ではなく段落の役割をまねすれば、どんな本でも高校生らしい感想文が組み立てられます。
