「読書をすると脳が活性化する」「前頭葉が鍛えられる」「ドーパミンが出る」といった話を聞いて、読書の効果は脳のどこに、どんなふうに表れるのか、本当に科学的な根拠があるのか気になっていませんか?
この記事では、読書と脳の関係について、脳科学の研究で分かっていることと、よく聞くけれど根拠がはっきりしない話を分けて解説します。
読み終えるころには、読書が脳に与える影響を正しく理解でき、脳をよく使う読み方を日々の読書に取り入れられるようになります。
読書の効果と脳|文字を読むと言葉を扱う脳の広い範囲が働く

読書をしているとき、脳では文字を見る、言葉の意味を理解する、場面を思い浮かべるといった働きが同時に起こり、前頭葉をふくむ広い範囲が使われています。
本を読むことは、目で文字を追うだけの単純な作業ではありません。
文字の形を認識し、音や意味に結びつけ、前後の文とつなげて内容を理解し、登場人物の気持ちや場面を想像する、という複数の処理を同時に行っています。
そのため、読書は脳のさまざまな部分を使う活動だと考えられています。
ただし、「脳が活性化する」ことと「頭が良くなる」ことは同じではありません。
ここからは、研究で分かっていることと、まだ言いすぎになることを分けて見ていきます。

読書で脳はどう変化する?脳科学の研究

読書と脳の関係は、脳の活動を画像で調べる方法を使って研究されています。
小説を読んだ翌朝、言語に関わる部分のつながりが強まった
アメリカのエモリー大学のバーンズらは、2013年に専門誌「Brain Connectivity」に研究を発表しました。
大学生21人に19日間続けて同じ小説(ロバート・ハリスの『ポンペイ』)を少しずつ読んでもらい、毎朝、脳の状態をMRIで調べたところ、読んだ翌朝は、言語の受け取りに関わる左側頭部のつながりが強まっていたと報告されています。
この変化は、小説を読み終えてから5日間ほど続いていたとされています。
ただし参加者は21人と少なく、この変化が長い期間どうなるのか、頭の働きにどうつながるのかまでは分かっていません。
読書中は前頭葉も使われている
脳の前のほうにある前頭葉、とくに前頭前野は、考える・記憶を一時的にとどめる・気持ちを整えるといった働きに関わる部分です。
東北大学の川島隆太教授は、脳の血流の変化を測る方法を使って、文字を黙って読んでいるときにも左右の前頭前野が働き、声に出して読む音読ではさらに広い範囲が活発になることを示してきました。
読書の効果として「前頭葉が鍛えられる」と言われるのは、こうした研究がもとになっています。
読書で脳が活性化するのは本当?脳の血流と前頭葉の話

「読書で脳が活性化する」という話は、よく「脳の血流が増える」という説明とセットで紹介されます。
「活性化」は脳がよく使われているという意味
脳の研究でいう「活性化」は、ある作業をしているときに、その部分の血流や酸素の使い方が増えて、よく働いている状態を指します。
読書や音読のときに前頭前野の血流が増えるのは、その部分がしっかり使われている証拠です。
活性化=頭が良くなる、ではない
ただ、作業中に脳がよく働いていることと、その作業を続けた結果として能力が伸びることは別の話です。
「読書中に前頭葉が活性化する」は研究で確かめられていますが、「読書をすれば前頭葉が鍛えられて頭が良くなる」とまで言い切れる研究は、まだ十分ではありません。
読書と頭の良さについては読書で頭は良くなる?語彙力・読解力・想像力との関係をデータで解説でくわしく紹介しています。

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読書でドーパミンは出る?右脳と左脳どっちを使う?

読書と脳については、根拠がはっきりしない話もよく広まっています。
読書とドーパミンの関係ははっきりしていない
ドーパミンは、楽しいことや、ごほうびを期待するときに関わる脳内の物質として知られています。
「読書でドーパミンが出てやる気が上がる」という話を見かけますが、読書そのものでドーパミンがどれだけ出るかを直接確かめた研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。
夢中になって読める本を読んでいるときに楽しさや満足感を覚えるのは多くの人が感じていることですが、ドーパミンの量と結びつけて断定するのは言いすぎです。
「右脳派・左脳派」は研究で否定されている
「読書は左脳を使う」「右脳を鍛える読書」といった話もよく見かけます。
アメリカのユタ大学の研究チームが2013年に専門誌「PLOS ONE」に発表した研究では、1,000人以上の脳の画像を調べ、右脳と左脳のどちらかを多く使う「右脳派」「左脳派」の人がいるという証拠は見つからなかったと報告されています。
言葉の処理は左側に偏りやすいなど、左右で得意な働きの違いはありますが、読書は左右どちらかだけで行うものではありません。
「右脳を鍛える読書」「左脳を鍛える読書」という分け方には、しっかりした科学的な根拠がありません。
脳をよく使う読書のしかた

読書の効果を脳の面から考えるなら、ただ目で追うより、頭を使いながら読むことが大切です。
ときどき音読してみる
音読では、目で見た文字を声にして、その声を耳で聞くので、黙読よりも多くの働きを同時に使います。
気に入った一節や、難しくて頭に入りにくい部分を声に出して読むだけでも、読み方に変化がつきます。
場面を思い浮かべながら読む
小説を読むときは、登場人物の表情や部屋の様子を具体的に想像してみてください。
場面を思い浮かべながら読むと、内容の理解が深まり、記憶にも残りやすくなります。
読み終えたら要約して人に話す
読んだ内容を短くまとめたり、人に説明したりするには、情報を整理して組み立て直す必要があります。
読むだけで終わらせず、アウトプットまでを一つの読書と考えると、頭をよく使う時間になります。
読書に効果がないと感じる人の悩みについては読書は意味ない?時間の無駄と言われる理由と反論|読書は必要かでも紹介しています。

よくある質問

読書で脳は本当に変化する?
小説を読んだあとに言語に関わる脳のつながりが強まったという研究があります。
ただし参加者の少ない研究で、長い期間の変化や頭の働きへの影響まではまだ分かっていません。
読書で前頭葉を鍛えることはできる?
読書中、とくに音読のときに前頭前野がよく働くことは研究で示されています。
ただし、読書を続ければ前頭葉の働きが伸びるとまで言い切れる研究は十分ではないので、頭を使う習慣の一つとして取り入れるのがおすすめです。
読書でドーパミンは出る?
読書そのものでドーパミンがどれだけ出るかを直接確かめた研究は、はっきりしたものが見当たりません。
夢中になって読める本で楽しさを感じることはあっても、ドーパミンの量と結びつけて断定するのは言いすぎです。
読書は右脳と左脳のどっちを使う?
言葉の処理は左側に偏りやすいものの、読書は左右どちらかだけで行うものではありません。
「右脳派・左脳派」という人の分け方も、脳の画像を調べた研究では根拠が見つかっていません。
読書で脳の血流は増える?
文字を読んでいるとき、とくに音読しているときに前頭前野の血流が増えることは、脳の研究で示されています。
血流が増えるのはその部分がよく使われているという意味で、それだけで頭が良くなるとは言えません。
紙の本と電子書籍で脳の働きは違う?
紙と画面で読んだときの理解度や脳の働きの違いは研究が続いている分野で、はっきりした結論はまだ出ていません。
どちらで読む場合も、集中できる環境で、頭を使いながら読むことが大切です。
まとめ:読書は脳を広く使う活動だが、言いすぎに注意

読書と脳の関係を振り返ります。
| よく聞く話 | 分かっていること |
|---|---|
| 読書で脳が変化する | 小説を読んだ翌朝に言語に関わる部分のつながりが強まった研究がある(21人の小規模研究) |
| 読書で前頭葉が活性化する | 黙読でも前頭前野が働き、音読ではさらに広い範囲が働く |
| 前頭葉が鍛えられて頭が良くなる | そこまで言い切れる研究は十分ではない |
| 読書でドーパミンが出る | 直接確かめた研究は見当たらない |
| 右脳・左脳を鍛える読書 | 右脳派・左脳派の根拠は見つかっていない |
読書は、言葉を理解し、場面を想像し、考えをまとめる、脳を広く使う活動です。
インパクトのある話に振り回されず、音読や要約を取り入れながら、頭を使う読書を楽しんでみてください。
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